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ラストラインを越えて

第2章 計測


『こうして話すのも……入学以来だよね』
「そうね。お互い休みの日が合わないし、ホマレったらいつも門限まで帰らないんだもの」
同室ではあるものの、一緒に過ごす時間は学園での授業や休み時間の方が格段に多い。
起きる時間も帰寮時間も全く噛み合わないため、寮内での会話が「おやすみ」以外ない日すらある。
「でも、これからはホマレのトレーナーが色々と効率的に指導してくれるでしょうし……案外今より余裕ができるかも?」
『だといいねぇ……』
眉を下げながらホマレが俯いた。
「ねぇ、ホマレの担当になった神座トレーナーってどんな感じの人?」
『え……』
「私のチームメイトの何人かが神座トレーナーにアドバイス求めに行ったことあるみたいなんだけど、感想がどれも「的確だけど怖かった」しかなくって。前から気になってたのよね」
『うーん。まだ本格的な指導を受ける前だからよく分からないけど、怖いのは合ってるよ』
昨日と今日の神座を思い返しながらホマレが続ける。
『怒られるとかの怖さじゃなくて……もっとこう、何だろ……全然人間味を感じないんだよね。ずっと無表情で、何考えてるのか分かりづらいし。言葉選びも直球すぎて辛辣だし』
淡々と必要なことだけ言い、何の温度もない目でこちらを観察してくる。
まるで石像や機械と対面している気分になるような男だった。
「えぇ……?」
ホマレの言葉にギンガウェーブは眉尻を下げる。
「勧誘されたときはどうだったの? ちゃんとホマレが神座トレーナーにメリットを感じたから応じたのよね? まさか……同意の上じゃなかったりする?」
ギンガウェーブが心配そうに訊く。
ホマレは、昨日神座と交わした握手を思い出して自分の手のひらを見た。
『うん……トレーナーが私を選んだ理由とか教えてくれて、それで、勢いでOKしちゃった……』
「勢い……!?」
ギンガの声が少し上ずる。
「本当に、それで大丈夫なの? 相性悪かったら教育方針とかモチベーションの維持で苦労してしまうこともあるのよ?」
『大丈夫かは分からないけど、とりあえず信じてみたい』
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