第2章 計測
「あら……今日は早いのね。電気も点けないでどうしたの?」
その言葉にハッとする。
いつの間にか日が暮れ、室内は真っ暗になっていた。
『あ……ごめん。ちょっとボーッとしてた』
「そう?まあ、体調が悪いとかじゃないならいいんだけど」
言いながらギンガウェーブは部屋の照明を入れた。
ホマレもベッドから立ち、カーテンを閉める。
「お風呂とご飯まだなら一緒に行きましょう。久しぶりにゆっくり話したいわ」
『……うん。行く』
それぞれタオルや洗顔などを持ち、2人で風呂場へ向かう。
「今年は梅雨入りがかなり早かったけど、まだ全然明けないわね」
梅雨の真っ只中、今の時期はどこに居ても蒸し暑い。
快適とは程遠い空気の廊下を歩きながらホマレも頷く。
6月に入る前からすでに梅雨になっていたから早めに終わるのを期待していたけれど、7月が近付いていても過ぎる気配はなかった。
『やだね、梅雨……今日はそこまで動いてないのにわりと汗かいちゃった』
じっとりとした額を触りながら返すホマレに、ギンガウェーブが何気なく訊く。
「そういえば、担当トレーナーついたって言ってたけど今日は練習休みだったの?」
『うん、練習はなかった……現時点の私のタイムとか身体の状態とか色々記録して解散になっちゃった。トレーニングは明日からだってさ』
「ふーん。まぁ、何にしろ良かったわ、ホマレの頑張りが報われて」
何とかしてトレーナーやチームからの勧誘をもらえるように足掻くホマレを見てきたギンガウェーブが穏やかに微笑む。
『……うん。ありがとう』
脱衣所に入るギンガウェーブの背中を追いながら小さく頷く。
入ってすぐの位置にある備え付けの鏡には、何とも言えない顔をした自身が映っていた。
風呂も夕食も終え、キトウホマレとギンガウェーブは揃って自室に戻る。
「消灯の時間まで何する?」
『えー、どうしよ。明日って提出物なかったよね?』
カバンを漁って宿題がないかどうかホマレが確認する。
「特にないはずよ。まあ、せっかく寝る以外の時間が被ったことだしお喋りがしたいわ」
ギンガウェーブが自分のベッドに座り、隣をポンポンと叩いて促す。
ホマレはゆっくりとそこに腰かけた。