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ラストラインを越えて

第2章 計測


それからホマレは1000メートル全力走に坂路などいくらかの記録を録られた後は、屋内に移動し色々調べられた。
身長、体重、筋肉量、肺活量……睡眠時間や普段の食事内容、アレルギーの有無など諸々。
その後は特別なことは何もなく「今日はこれまで」と帰された。
多少の筋トレやランニングがあってもよかったのに、とホマレは物足りなさを感じながら寮の自室に戻る。 まだ18時半だった。
『……』
窓から夕暮れが差し込んでいる。
同室のウマ娘はまだ練習中なのか帰ってきていない。
いつもと違い出迎えてくれる相手が居らず、部屋に1人きりなのが何だか珍しくて、少し寂しくもなった。
荷物をしまい、部屋着に着替えてベッドに座る。
『(明日から、ちゃんとトレーニングできるよね……?)』
ふと、そんな不安がよぎる。 まだ神座のことをよく知らないけれど、自分を担当ウマ娘に選んだ理由から考えるとかなり異質な存在であるように思えた。
落ちこぼれのウマ娘に声を掛ける理由なんて、よくある与太話のように「この子を勝たせたい。強くしてあげたい」と憐れみと温情で手を差し伸べられる場合が大概だろう。
しかし神座は純粋な実験欲から「才能のないウマ娘をどこまで強く育てられるか試したい」と言っていた。
そのときの無表情が脳裏に焼き付いて離れない。
担当ウマ娘のことを好奇心を満たすための実験サンプルとしか見ていない。
あまりにも普遍的なトレーナー像と欠け離れている。
どんなトレーニングを課してくるか予想がつかない。
今日はトレーナー然としていたけれど、明日は何を言い出すのか分かったもんじゃない。
『…………解約ってどうやるんだろ』
ホマレは今さらながら、勧誘された当日のうちに神座とトレーナー契約を交わしてしまったことを後悔し始めた。
トレーナーがマンツーマンで見てくれるというメリット以上のデメリットがこの先ないとは言いきれない。
ベッドに座り込んで項垂れていると、自室のドアが開く音がした。
同室のギンガウェーブだ。
『おかえり、ギンガちゃん』
ホマレは顔を上げて出入口の方を見る。
高い背丈のウマ娘が、銀色の髪を揺らしながらヌッと出てきた。
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