第28章 2度目の夏合宿
7月中旬。
早朝の軽い空気を切りながら、キトウホマレはギンガウェーブとアルターアワーの3人でジョギングをしていた。
海の見える車道を談笑混じりに走っていく。
「こうして一緒に走るの、久しぶりよね。ホマレのトレーナーが朝練を許してくれて良かったわ」
「そーそー。自主トレ基本禁止って聞いてビックリしちゃった。束縛系かな?」
トレーニングは目の届く範囲でやるよう言われているホマレに2人が言う。
『あはは……私、加減とか効率とか苦手だから、1人じゃ信用できないって思われてるのかも』
片眉を下げながらホマレが答える。 昨日ダメ元で神座に許可をもらいにいったら「複数人なら別にいい」とあっさり返事があった。
『誘ってくれてありがとね。2人と朝練できて嬉しいよ』
白み始めた空と、遠くの波音が心地いい。
重なる靴音や呼吸も、いつも1人でトレーニングを受けているホマレにとっては貴重なものだった。
『(友達と走るの楽しいな……神座トレーナーがいないのも何だか新鮮)』
朝露の気配や潮風、滲む朝日を感じながらホマレはギンガウェーブとアルターアワーとの短い時間を堪能する。
やがて走り終わり、3人は合宿所に続く道まで戻ってきた。
「あー、お腹空いた!このまま食堂行こ~」
「そうね。時間的にも丁度いいし、ホマレも……」
『……』
「キョロキョロしてどうしたの?」
周囲を見回していたホマレにギンガウェーブが声をかける。
『えっ?いや、その……何でもない』
無意識だったらしく、やや驚いた調子でホマレがそう返した。
しかしまだ辺りが気になるようで、確認するようにもう一度周辺の景色に目を向けている。
『……あ、トレーナーだ!気になって見に来たのかもっ』
ホマレが宿舎の外にいる神座を見つけ、走っていく。
その後ろ姿はジョギングのときよりも軽快だった。
「ホマレってさ、ガッチガチに管理されてるのにトレーナーのこと結構信頼してるよね~」
「そうねぇ。私も最初は心配してたんだけど、ホマレはわりと楽しんでるみたいなの。まあ、上手くいってるなら安心だわ」
ギンガウェーブとアルターアワーは互いに頷き合いながら、歩いて2人の元まで向かうことにした。