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ラストラインを越えて

第27章 ゲームセンター


「あなたのです。自分で取りなさい」
神座がその場からさっさと歩き出しながら言い、ホマレはいそいそとしゃがんで獲得口に落ちたぬいぐるみを取り出した。
星とタッセルの耳飾りを付けた、栗毛のウマ娘の人形。
自分そっくりなぬいぐるみを手に、嬉しそうに飛び跳ねながら神座のあとを追う。
『うわぁ……1回で獲った! トレーナーすごい……!』
「大人しくしてください。公共の場ですよ」
『うん! トレーナー、本当にありがとう!!』
ニコニコしながらホマレは神座に礼を言い、ご機嫌な様子でゲームセンターを出た。
「学園に戻ったら19時まで走り込みです。早く戻りましょう」
『はーい』
「前を見て歩きなさい」
ぬいぐるみを手で揉みながら進むホマレに神座が注意する。
『トレーナーのぬいぐるみも出たらいいのに』
ふと、ホマレがそんなことを言う。
「出る可能性はゼロです。僕はウマ娘じゃありませんから」
何を当たり前のことを、といった口調で神座が返す。
それに対してホマレは少し不満そうに俯いた。
『私の成果のほぼ全部は神座トレーナーのおかげなのに……』
神座も評価されるべきだ。ホマレの不満はそこから来ていた。
「だとしても、走ったのはあなたです。URAにとっても観客にとっても、僕にとってもそれが事実です。自信を持ちなさい」
『うーん……』
まだ納得していないホマレは少し唸りながらぬいぐるみを見つめ、やがて口惜しそうにカバンにしまいこんだ。
『無いなら作ればいいよね。今度の休みに材料買ってみるよ』
「……トレーニングに支障をきたさないように」
神座に釘を刺されつつ、ホマレは学園へと戻っていった。









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