第27章 ゲームセンター
そして持ち上げられたぬいぐるみはまっすぐ獲得口へ向かって移動していく。
アームは勿体ぶるように力を弱め、ぬいぐるみを少しずつズリ落とそうとしていた。
しかし獲得口はすぐそこだ。
『いけ、いけ……!』
期待と確信の狭間で目をギラつかせながらホマレが呟く。
そして完全に脱力したアームに取りこぼされたホマレのぬいぐるみは先ほどのオルフェーヴルのぬいぐるみにぶつかり、より遠くへ弾き飛ばされた。
『あっああ、ああああ…………! ……!』
悲鳴のようなものが喉の奥からせり上がる。
しかしそれは現実に打ちひしがれた者の嘆声であり、いかなる絶望もゲームセンター内の愉快な雑音に掻き消された。
ただ1人、神座だけがホマレの悲痛な叫びに耳を傾けている。
『ううっ……。神座トレーナー、帰りましょっか……』
耳はペッタリと伏せられ、尾はこれ以上ないくらいに垂れている。
項垂れヨロめきながら出口へ歩こうとするキトウホマレを見て、やる気の減退を観測した神座はその場に足を留めた。
ホマレの落ちた尾が視界の隅を掠める。
「……」
短く息を吐き、クレーンゲームに新たな百円玉を投入した。
ピロン!と大きな音が背後で鳴るのを聞いて、ホマレが振り返る。
『と、トレーナー……!?』
担当ウマ娘から信じられないものを見るような目で見られながら神座は筐体を操作し、ホマレのぬいぐるみを持ち上げた。
やはり今回もアームは性根が腐っているかのような挙動を見せ、獲得口へ進むごとに力を弱めていく。
『がんばれ……! がんばれ……!』
神座はあとはただ待つだけと言わんばかりに暇そうに立ち尽くし、ホマレは運ばれる自身のぬいぐるみを注視しながら応援した。
やがてアームから振り落とされるようにぬいぐるみは落ちる。
『わ……!』
またダメだったか。ホマレがそう思ったそのとき、ホマレのぬいぐるみはオルフェーヴルのぬいぐるみの上を跳ねてそのまま獲得口に投げ込まれていった。
瞬間、景品ゲットを告げるやかましいサウンドエフェクトが鳴り響く。