• テキストサイズ

ラストラインを越えて

第2章 計測


目の前のゴール地点と、神座が指差した方向に小さめの赤いコーンが1個ずつ見える。
「ペース配分を見るのが目的なので好きなように走って構いません。ただし実戦を想定すること。戦略を意識しつつ走りなさい」
『わかりましたっ』
返事しながら少し遠くのコーンまで走っていく。
スタート地点に立ち、神座の方へ手を振る。ゴール地点では左手を上げて応える神座の姿が小さく確認できた。
『よーし……』
好きなタイミングで走り出していいと言われた。
神座はきっと向こうで、こちらの動きを注視していることだろう。
少し口元を綻ばせ、また直ぐに引き結ぶ。
いつものようにスタートの構えを取り、そしてほんの少しの間だけ目を瞑り――勢いよく駆け出した。
『(始めはペースを保って……)』
芝のコースを単独で駆けていく。
ペースメーカー代わりに、周りに他のウマ娘も一緒に走っている様子をイメージしながら順調に進んだ。
半分を過ぎた辺りからじわじわと意識的に加速をしていき、最後の400mで一気にスパートをかけた。
『(いい感じ……!)』
神座の前を駆け抜け、減速しながら振り返る。
タイムを書き込んでいる神座に近寄り、手元を覗き込んだ。
『どうでした?』
「そうですね……伸び代が多いです。運動直後の記録もつけるので手を出しなさい」
『あ、はい』
改善点だらけのようだ。
神座にまた測られながらホマレは眉を少し下げた。
15秒後、数字を書き込みながら神座が言う。
「3分後にまた測りますので、なるべくリラックスして待機しなさい」
『もう一回ですか?』
「運動後の心拍数が数分でどれだけ安静時に近くなるかを見ます。心肺機能の回復力……主にスタミナを把握するためです」
神座が時計を見ながらそう返す。ホマレは息を整えながらその場にしゃがみ込み、3分経つまで待つことにした。
『(……なんかすっごいそれっぽい。自分だけのトレーナーがいるってやっぱいいな)』
梅雨時の生温い風を受けながら、ホマレは小さく笑った。









/ 132ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp