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ラストラインを越えて

第2章 計測


「次は体温です。そのままじっとしてなさい」 神座はポケットから出した電子体温計をホマレのウマ耳に挿し入れた。
『ヒッ!?』
「終わりました。37.8度……。動いて結構です」
1秒で済んだものの、いきなりのことで驚いたホマレは耳を絞りながら神座から距離を取る。
「今日以降、トレーニングの前後には心拍数や呼吸、体温を記録するので慣れるように。……では準備運動を始めてください」
『はぁい』
ホマレは体温を測られた方の耳を触りながら移動し、休憩スペースのベンチの上にタオルと水筒を置く。その近くでストレッチを始めた。
『いち、に、さん、し……にー、に、さん、し……』
ジャンピングジャックから始め、いつものルーティンでこなしていく。
授業で習った動的ストレッチの流れをそのまま組んでいる。
神座に何かしらの指摘を受けるかと思ったが、ベンチに座って静かにホマレの準備運動を眺めるだけだった。
『外周行ってきまーす』
ウォームアップのため神座に一声かけてからジョグを始める。
ホマレはコース内でランニングをしているウマ娘たちに目を向けながら、半周先を目指して軽く走っていく。
『(誰かが見てくれてるっていいなぁ……)』
いつも1人だった。担当トレーナーやチームの元で活動している他のウマ娘たちがいつも羨ましくて仕方がなかった。
でも、今日はもう違う。
ただの準備運動すら楽しい。嬉しい。
ジョグの後、スキップに切り替えて進むその足も、いつもより弾んでいる気がした。
『戻りました!』
「ええ。コースが空くまであと10分あるので流しとスタートの練習を各3回ほどやってください」
『はーい』
声を掛けるが、神座は一瞥もくれずにそう指示を出した。
記録紙になにやらメモを取っているようだ。
『(後でまとめて指摘する感じかな)』
何を見て、何を書いて、そして何を教えてもらえるのか。
ホマレは嬉しさと不安を感じながら神座の指示通りに時間を潰した。
「まずは1200m通しで400mごとのラップタイムを測ります。あそこに置いたコーンがスタート位置です。移動して、準備が整ったらこちらに手を振ってください。スタートのタイミングはあなたに任せます」
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