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ラストラインを越えて

第24章 ファン感謝祭


すでに坂を下りかけているペアが見え、少し焦ったように右肩に置かれた神座の手を掴んだ。
〈4つ目は定番の"網くぐり"!低く張られたネットの下を這うように駆け抜けましょう!〉
緑色のネットをグイッと下から押し上げて高さを保っても、腰をかがめながらでしか進めない。
『追いつかれちゃうかも!』
「慌てたら引っ掛かりますよ。耳と尻尾に気を付けなさい」
『トレーナー、もっと網上げて……っ!』
ホマレは耳飾りを守るように頭を下げ、神座に覆い被さられるような体勢で進む。
すぐ後ろで同じように網を引っ張り上げる振動が伝わり、後続の気配を感じたところで2人は網くぐりを突破した。
『あとは走るだけ……! トレーナー、急ごう!』
フラフラしながら這い出たホマレが神座とまた肩を組み直し、100m先のゴールテープに目を向ける。
〈さあ、ラストは"直線一気"!トレーナーとウマ娘の最後の息の合わせどころ!どれだけのスパートを掛けられるか見物です!〉
「ジョグのときのスピードまででしたら合わせられます。行きましょう」
『うん!』
ホマレが力強く頷いた瞬間、2人の脚は同時に地面を蹴った。
結ばれた足が互いを引っ張り合いながらも、完璧にリズムを刻む。
春風が頬を切り、歓声が波のように押し寄せる。
準備運動程度の速度ではあるものの、ホマレの心臓はいつものレースより早く鼓動を打っていた。
『(トレーナーと一緒に走るの、楽しい……!)』
胸の奥が熱くなる。鼓動が跳ねるたびに足取りが軽くなり、体の芯が火照っていく。
その熱をエネルギーに変え、ホマレはただ真っすぐ前を見つめた。
〈赤ペアがリードを保ったまま、残り50メートル!〉
神座が耐えられるスピードを維持したまま、誰よりも先にゴールテープを切ろうと進んでいく。
〈おっと!? 後方から青ゼッケンのペアが驚異的な末脚で詰め寄ってくる!〉
『えっ……!?』
ふいに風の流れが変わった。
耳の後ろで、自分たち以外の足音が聴こえる。
〈現役ウマ娘とウマ娘トレーナーの黄金コンビ、猛追ッ!残り30メートルの赤ペアに迫ってきている!!赤ペアは粘れるか!?〉
アナウンスに煽られながらもペースを保ち、互いの安全を優先する。
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