第24章 ファン感謝祭
全部で10組ほど居るらしい。
普段はしないような種目に皆ソワソワしているようだ。
唯一静かに立ち尽くしている神座の腰のベルトに手を添え、ホマレは観客席の方を見る。
いつもと違い緊張感の薄いスタンドの雰囲気に居心地のよさを感じた。
人がスタンドいっぱいに詰まっているのにざわめきは楽しげで穏やかだ。
『(いつもこんな感じならいいのに……)』
レース前の張り詰めた空気が苦手なホマレはやや眉を下げながら視線を神座に戻す。
〈ご来場の皆様、お待たせいたしました!競技の準備が整いました。司会は私サクラバクシンオーが引き続き務めさせていただきます!〉
会場に元気なアナウンスが響く。
ホマレは思わず神座の服をギュッと掴んだ。
『……始まるね』
「ええ」
少し緊張してきた。
神座とは長い期間ずっと一緒にいるとはいえ、こんなにも密着するのは初めてだ。
自分の身長は神座の肩よりも下。目線の高さだって脚の長さだって違う。
きっと神座はすごく走りづらいだろう。
体格差を自覚し、ホマレは今さらながら申し訳なくなった。
〈お次の種目は"パートナー・ダッシュ"!!ウマ娘とその担当トレーナーが二人三脚で障害物競走に挑みます。皆様どうぞ盛大なご声援をお願いいたします!〉
周囲のペアがスタートの構えを取る。
ホマレは右足を後ろに下げ、重心を少し低くする。
神座もそれに合わせて体勢を整え、支えるようにホマレの肩に手を添えた。
〈位置について!よーい……ドン!!!〉
弾けるような銃声が響くと同時に、一斉に走り出す。
〈さあ始まりました。まずはハードルが選手らの行く手を阻みます。かなり低めの設定ですが、はたして2人で1つになって飛び越えることができるでしょうか!?〉
ガードレールくらいの高さのハードルが5台ほど奥に向かって並んでいる。
『えっ、どっちの脚で飛ぶ?』
「好きに飛びなさい。僕がそれに合わせます」
『じゃあ、いくよ……はい、せーのっ!』