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ラストラインを越えて

第24章 ファン感謝祭


春のファン大感謝祭。天気は程々に晴れていて、心地よい風が競技用コースに吹いている。
ザワザワとした会場で、勝負服姿のキトウホマレは嬉しそうに人混みを眺めていた。
『トレーナー、もうすぐ出番だねっ』
「そうですね」
神座が髪を結びながら短く答える。踏まれる可能性を考慮して腰辺りの高さまで引き上げていた。
『参加登録してくれてホントにありがとう!……実はね、お願いするとき断られると思ってたんだ』
ホマレが参加するのは、トレーナーとウマ娘のペアで行う二人三脚での障害レースだ。
ウマ娘はトレーナーの速度に合わせ、トレーナーはウマ娘の歩幅に合わせて障害物を越えていく。通常の二人三脚よりも連帯感が必要な内容になっている。
「たしかに僕とあなたでは身長差や体格差がかなりあるので不利な組み合わせだとは思いましたが……今回は余興程度ですし、目立つ方がファンへのアピールにもなるので許可しました」
そもそもホマレは神座が余興に付き合ってくれるとすら思っていなかった。
ダメ元で希望した甲斐があったとホマレが神座に笑顔を向ける。
『トレーナーと一緒に走れるの嬉しいな。頑張ろうね!』
「はい。怪我はしないよう気を付けてください」
数分後、出走者たちはスタート地点に集められた。目の前にゲートはなく、代わりに白線が引かれている。
近くにいた運営委員に赤いゼッケンと帯状の布を手渡された。
『トレーナー、ヒモ結んで~』
ゼッケンを身に付けながらホマレは布を神座に渡す。
「いいでしょう。少しじっとしていてください」
神座がしゃがみこんで、ホマレの左足に自身の右足を付けた。それから絶妙な加減で2人の足首にヒモを固定する。
『トレーナーの靴大きいね』
「あなたの足が小さいだけです。……締め方はこれでいいですか?」
『うん、バッチリ!』
ホマレは自分の運動靴と神座の革靴を見つめながら嬉しそうに頷いた。
『あっ、そういや一度も練習してなかったよね。スタートのときどっちの足から出す?』
「外側の足から出してください。僕はあなたが走りやすいよう努めるので、あなたはスピードの調節にだけ集中するようお願いします」
『ふふ、トレーナーのこと引きずらないように気を付ける』
他の出走ペアたちも準備が終わり、次々とスタートラインの前に立って待機していく。
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