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ラストラインを越えて

第22章 図書館


記憶力の良いウマ娘みたいだ。ホマレは感心と畏れの間で揺れながら返す。
「……私の妹が今年からクラシックなんです。オルフェーヴルというウマ娘にもし会うことがあったら、どうぞよろしくお願いします」
『オルフェーヴル……さん?』
学園内で見聞きしたことがある。
ホマレの耳にも噂が入ってくるような生徒ということは、ジュニア級からすでに頭角を現していた存在である可能性が高い。
シニア級とクラシック級であれば偶然レースが被ることもあるだろう。
ふとドリームジャーニーの表情に違和感を覚える。
こちらを見上げる薄い水色の瞳が、引き結ばれた微笑が、一瞬憐れむような気配を帯びたように見えた。
『……あっ。本、探してましたよね。邪魔してごめんなさい。もう行きますね』
思わず、出口の方を向くふりをしてドリームジャーニーの顔から目を反らす。
なにか見てはいけないものを見たような気がして、無性にその場から離れたくなってしまった。
『じゃあ、さよなら……』
ドリームジャーニーに控えめに手を振りながらホマレは数歩下がり、そのまま踵を返した。
ほんの少しの心拍の乱れと共に、早足で図書館から出る。
『(ドリームジャーニーさん……やっぱ、なんかちょっと怖いかも……)』
あの表情の意味を考えないようにしながら、教室に戻っていくのだった。









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