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ラストラインを越えて

第22章 図書館


ある昼休み、ホマレは学園内の図書館で本を物色していた。
『(トレーニングの教本も、歴代のレジェンドウマ娘たちの記録もいっぱいあるけど……どれもピンと来ないや)』
手に取った本をめくっては棚に戻すのを繰り返す。
そもそも自分はいたずらに本を漁った程度で何か掴めるような逸材じゃない。
そのレベルのセンスがあればもっと強いウマ娘に育っているはずだ。
ホマレは溜め息を吐きつつ、本棚の間で立ち尽くす。
『(神座トレーナーの指導のおかげで成長はしてるんだけど……それだとどこまでも"想定内"でしかないんだよなぁ)』
有馬記念のときに言われた「想定内」という言葉が、いまだに胸に残っていた。
勧誘のとき、「才能も期待もない素材を育ててどれだけ強くできるか試したい」と言われたのを思い出す。
思えば神座はずっと、自分の目の前のウマ娘がどこまで想定を超えてくるか、ただそれだけを見ていた気がする。
『(そういえば、1着になれって言われたのはメイクデビューと未勝利戦だけだ……)』
それ以外のレースでは着順よりも、どういう走りを見せたか、強い相手にどこまで食らいついたかに重点を置いていた。
掲示板に載っても載らなくても、それはただの結果として処理された。
『(この価値観から考えると……有馬記念での「想定内、元々勝つと思ってない」って言葉は、別に期待してなかったからとかじゃなくて、着順に囚われるなって意味で言ってたのかな……?)』
そう考えたら少しは救われるのかもしれない。
だとしても、それじゃイヤだ。
全然納得できない。できるわけがない。
『(予想を裏切りたい……神座トレーナーの退屈を破れるような想定外にならなきゃ)』
このまま神座の想定通りに育ち、想定通りに走り続ければ、自分にとっては順風満帆で締まる。だけど、それだけで終わってしまったら神座の3年間は虚無でしかない。
誰よりも予想外の展開を欲している神座に何の衝撃も与えられないまま、トゥインクル・シリーズが終わってしまう。
それだけは絶対にダメだ。
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