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ラストラインを越えて

第21章 バレンタイン


「ありがたく頂戴します。今日はもう遅いですし、そろそろ帰りなさい」
時計に目を向ける。21時半を指していた。
寮の門限もあるだろうと下校を促す。
『え~、食べてるとこ見たいなー』
「見て何になるんですか? 心配せずとも捨てたりしませんよ」
『そうじゃなくてさー』
ああだこうだ言うホマレを放置し、神座も帰るために部屋と荷物を整頓した。
「暗いので送ります。帰りますよ」
『ええっ、いいの!? やったー!』
単純だ。さっきまで文句を垂れていたのが嘘のように喜んで外へ出ようとしている。
『粘れば毎回一緒に帰ってくれたりする?』
「あなたが帰るのが遅くなると僕が寮長に注意されてしまうので、これを成功体験だと思わないように。忠告が重なればその分、あなたの育成に充てるための時間が減ります」
『はーい』
冗談混じりの質問に神座は真面目に返した。
もし軽く応じれば、それは冗談では済まなくなってしまう。
『ふふ、誰もいない。今夜も寒いね』
2月。あと少しもすれば春が来る。
冷たい廊下を嬉しげに歩くキトウホマレを連れて、神座は静かに校舎を後にした。









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