• テキストサイズ

ラストラインを越えて

第2章 計測


次の日の放課後、時刻は16時。
さっそく今日から2人でやっていくということで、キトウホマレはジャージ姿でトレーニングエリアに現れた。
それなりに天気がよく、場内は結構な人で溢れている。
スタート地点ではゲート練習の号令が飛び、反対側では砂煙を巻き上げるスパート練習――コース内はウマ娘たちの気迫で熱を帯びていた。
邪魔にならない位置で立ち止まり、ホマレは神座の姿を探す。
『えーっと、えーっと……』
全身黒い長身だから目立つはずだ。ウマ娘ではない人影を遠目からしらみ潰しに確認したが、それらしき人はいなかった。
『いない……。ここじゃなかったっけ?』
「合ってますよ」
『うわっ。お、お疲れ様ですトレーナー』
いつの間にか真横に立っていた神座に驚く。昨日と同じスーツ姿で、手には記録紙の挟まったクリップボードとストップウォッチを持っていた。
「手始めに今日はあなたの現状を確認します。主にタイムの計測や身体検査、あとは食事や睡眠に関する聞き取りも行いますのでそのつもりで」
『はい。よろしくお願いします……!』
やや緊張気味にホマレは頭を下げる。
授業以外でこうして誰かに付き添ってもらえる機会はこれが初めてだった。
思わず口元がニヤけるのを感じ、それを抑えながら顔を上げた。
「16時半から17時までの30分、芝コースの利用枠を確保しています。それまでの時間、ストレッチとウォームアップをしましょう。まずは安静時の脈拍を測るので手首を出しなさい」
『こう、ですか?』
「はい。そのまま動かないように」
神座は左手でホマレの手首を取り、右手のストップウォッチを見ながら無言で脈を数える。
『(トレーナーの手、ひんやりしてる……)』
自分の手首に当てられた筋張った大きめの手を見ながら、ホマレは計測の間を静かに待つ。
15秒後、指を離して記録紙にペンを走らせた。
「脈拍は21回、呼吸は5回……平均値より少し多いですね」
緊張しているのが脈に表れてしまったみたいだ。
ホマレは気恥ずかしくなりながら、神座から目を反らした。
/ 124ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp