第18章 私だけを見つめて。
縋るように訴えるホマレを神座が横目で見下ろしながら会計を進めていく。
「ギフト用の包装はいかがされますか?」
「結構です」
「かしこまりました」
あっという間に支払いが済み、店員がニコッと笑いながらホマレに耳飾りの入った小さな紙袋を手渡す。
『どうも……』
さっさと店から出ていく神座の背を急ぎ足で追いかけた。
『か、神座トレーナー……耳飾り、ありがとうございます』
神座について歩きながら申し訳なさそうな声でホマレがそう言う。
ただでさえ休日に個人的な買い物に付き合ってもらっているのに支払いまで負担させてしまった。
『その……ごめんなさい……』
神座は特に何の反応も示さずホマレに目を向ける。 ホマレの耳はまるで散々叱られた後のように絞られていた。
「謝る必要はありません。走りで返せと先ほど言ったでしょう」
『うん……』
ゆっくりと学園方面に歩いていく。
ホマレは紙袋を胸元で押さえたまま、神座の横で小さく息をつく。
いつもならニコニコと神座の顔を見ながら歩くのに、今やその視線はひたすら路面に向けられていた。
歩くたびに神座の視界の端でホマレの情けない耳が揺れる。
「耳飾り、着けないんですか」
訊くと、ホマレが顔を上げた。
『……今?』
言われて紙袋から耳飾りの入った簡易包装のビニールを取り出し、開ける。
先ほど購入した星の耳飾りを取り出した。
2人で道路脇に寄って立ち止まり、耳に着けようとする。
『トレーナー……右と左、どっちがいい?』
ふと、ホマレが呟くような声で問う。言葉尻がわずかに震えていた。
「別に、どちらでも。あなたの着け心地のいい方で」
『……わかった』
そうして、ホマレは左耳に耳飾りを掛ける。
『似合ってる?』
無理して笑顔を作りながらホマレが神座に目を向ける。
ぎこちない口角と八の字の眉が精一杯この場を取り繕おうとしていた。