第18章 私だけを見つめて。
2日後の放課後。キトウホマレは約束通り神座と耳飾りを探しに街に出た。
「ここ周辺にあるウマ娘用の耳飾りを扱っている店は把握していますが、どこか目当ての店はありますか」
事前に調べてきたらしい神座がホマレに訊く。
『うーん……特にないけど、個性的な耳飾りが多い店がいいな。量産品じゃなさそうなやつ』
「わかりました。該当する店が近くにあるのでそこに行きましょう」
神座に先導されホマレは歩いていく。
12月の寒空がビル郡の隙間から覗いている。曇りのような晴れのような、出かけるには丁度いい穏やかな天気だ。
もうすっかり着込まないと出歩けないような季節になってきた。制服と紺色のピーコートに身を包み、冬の落ち着いた雰囲気の街を眺めながら進む。
冷たい風が神座の髪を巻き上げ、ホマレの鼻先を掠める。
「……失礼」
手で払いのけた仕草で気が付いたのか、神座が風下へ移動する。
『耳飾りのついでにトレーナーの髪留めも探す?』
「遠慮します」
冗談めかして提案すると、即答でそう返された。
本当に邪魔なとき結ぶ用の髪ゴムを所持してるから必要ないんだろう。
『(耳飾り決まったら……そのまますぐに解散になるのかな)』
店をはしごして無理やり延長するのもありだ。やり過ぎない限り神座は付き合ってくれるはず。
「この店です。どうぞ」
路地に入った先にある路面店のガラス扉を神座が開ける。
『ありがとう』
神座に会釈しながら入ると、店内の奥の方から店員の「いらっしゃいませー」が聞こえてきた。
店員はホマレの耳を見て、すぐにウマ娘用の耳飾りのコーナーをやんわりと手と目線で示す。
それに従ってホマレは神座と共に商品棚へ近付く。
『いっぱいあるね』
「ええ。どれも一点モノらしいので誰かとデザインが被ることも防げます」
値札は全部手書きで、細い麻紐で商品に括りつけられている。
『いいね~、私だけの耳飾り……』