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ラストラインを越えて

第18章 私だけを見つめて。


「そういえば、あなたはいつも耳飾りを着けていませんね。嫌いなんですか?」
『うーん。嫌じゃないけど、何着ければいいのか分からなくて』
勝負服を着たことで頭部の物足りなさが強調されたみたいだ。
トレセン学園のほぼ全てのウマ娘が耳に何かしらの飾りを着けて過ごしているから、一層寂しさが目立つ。 着けた方が華やかなのは間違いないだろう。
『あっ、そうだ。トレーナー、私に似合いそうな耳飾り一緒に選んで? 勝負服にも合いそうなやつ!』
この際だ、とホマレがねだる。
「買い物なら1人でも行けるでしょう」
『無理っ!1人じゃ選べない!』
そう返すと、神座は目を伏せて溜め息を吐いた。
「次の休養日……明後日の放課後でよければ同行します」
『やったー!! ありがとうございます!』
本当に了承してくれた。
ホマレは嬉しげに飛び跳ねながら神座に礼を言う。
そんなこんなでトレーナー室に戻ると、神座がデスクの上に置いてあるスマホを手に取った。
「一応、耳飾りを選ぶときの色味の確認用に写真を撮っておきましょう」
着替える前に神座がホマレの全身像を記録しようと端末のカメラを起動した。
『いえーい』
「ポーズは結構です」
背筋を伸ばしピースをこちらに突き出すように向けるホマレを神座はそのまま撮る。
『カッコよく撮れた?』
「普通です」
ホマレも端末を覗き込む。確かに普通の写りだった。 何気ないスナップ写真そのものだ。
しかし神座にフォームの確認以外で姿を撮られることがあまりなかったから、ただの自分の写真がそこにあることが少し珍しくも思えた。
『待ち受けにする?』
「いいえ」
『待ち受けにして?』
「しません」
なんとも素っ気ない。予想の範疇ではあった。
『え~、じゃあいいや。ずっと消さないでね。たまに見返してね』
せめて耳飾りを買った後も残しておいてほしい。
でもどうせ必要ないから消されるんだろうな。
「……」
意外にも神座は却下せず、返答を誤魔化すように端末を閉じた。
『(……まさかね)』
ホマレは勝負服のスカーフを外しながら首を傾げた。









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