第1章 ボーイズ&ガールズ
教室に入っても、私の心臓は落ち着くことはなかった。
だって月島蛍と同じクラスなんだもん。
教室に入ってくるんだもん!!
隣の席なんだもん!!!!
極力月島蛍を視界に入れないようにって頑張るんだけど、私の煩悩が私の努力を無駄にする。
横目でちらりと月島蛍を盗み見る。
椅子を静かに引いてゆっくりと座るその動作はまるで神の所業のように美しい。
長く細い指先が机の中の教材を取り出す様は凪いでいる海のように滑らかで優雅だ。
ああ、神さま。
どうしてこの世に月島蛍と言う男を生み出したのですか。
月島のご両親に感謝の意を述べたい。
「本当にありがとう……」
「……僕、君になにかした?」
「しましたしました。生きているという素晴らしい……うぎゃああ!!」
「なに急に……。うるさいんだけど……」
「も、申し訳ない……」
え……!?
ちょっと待って、本当に待って。
今私、月島蛍くんと会話しました?
嘘でしょ……しかもまた独り言が口から漏れてた……?
まじかよ……。
終わった、変な人間だと思われた……。
友人たちに助けてとSOSを出そうと視線を飛ばすが、彼女たちは声を出さずに笑っていやがる。
何がおかしい!!!!
友人の命の危機だぞ、助けろ!!!!
どしよどしよ……、月島蛍と話しちゃった。
観ているだけで十分だったのに、考えているだけで十分だったのに。
不可抗力で会話を……!!
神さまありがとう、今日この日を記念日とします私の中で。