第2章 マイワールド
「まだ教室に残ってたんだ」
教室の入り口から声がした。
そちらを向くと、手を振っている山口くんとその後ろに月島蛍がいた。
変な声が出そうになって慌てて口を手で抑える。
まさかの月島蛍の存在に心臓は張り裂けそうだ。
授業中いつもみてるけどさ、放課後となるとなんでこんなに違う風に見えるんだろう。
なんか別人というかなんというか……。
とどのつまり、予想だにしていない月島蛍は心臓に悪いと言う事だ。
「ありがとうございます……」
「??なにが?」
「こっちの話」
首を傾げる山口くんは、自分の机の中をごそごそと漁る。
しばらくして「あった、よかった~」とへにゃっと笑う。
その手の中には筆箱が。
ああ、忘れものを取りに戻ってきたのか。
それに月島蛍は付き合ったというわけか。
なんて、やさしい……。
山口くん限定だけど。
「空知さんも変えるところ?」
「そう、だけど」
「じゃあ、途中まで一緒に帰らない?」
へ?
今なんと……?
「いいよね、ツッキー」
よくないよくない。
私がよくない。
「別に。山口がそうしたいならそうすれば?」
山口くんに委ねないで。
私が死ぬでしょうが。
「じゃあ、一緒に帰ろう!!」
悪気のない屈託な笑顔に私は断る気すら起きずに頷くことしかできなかった。
ああ、なんて夢のようなんだ。
月島蛍と一緒に帰れるなんて。
それもこれもすべて山口くんのおかげだ。
今度なにかお礼しなくちゃ。
あ、友人たちにもあとで報告しよう。
応援してるって言ってたもんね。
いつも雑な扱いされてたけど、愛情の裏返しってわかったら、雑でもよくなってきたもん。
心臓が爆発している中、私と山口くん、そして月島蛍は昇降口へと向かった。
その間、私の全身が汗でべちょべちょで多分魚拓ならぬ拓ができると思う。