第1章 ボーイズ&ガールズ
やばい、動悸が激しい。
こんな動悸が激しくなるの、初めて月島蛍をこの目で見た以来だ……。
過呼吸起こしそう。
「一度、一度、深呼吸をしよう。落ち着け。休憩とかあるなら、その時を狙おう。うん、それがいい。そうしよう」
体育館へ続く渡り廊下にしゃがみこみ、何度も、何度も息を吸って命を吐く。
いつの間にか掌は汗でベチャベチャになっていた。
ハンカチなんて持ちあわせていない私は、仕方なしにスカートで拭いた。
その時だった。
「なにしてんの?」
頭上から声がした。
一瞬、脳が少女漫画になって月島蛍かと思ったけど、声が違う。
山口くんでもない。
一体誰だろう、と顔を上げると目の前にはオレンジ色の髪の毛の男子生徒が私を見下ろしていた。
だ、誰……。
オレンジ頭の子は、私が動かないことを不思議に思ったのか、首を少し傾げると私の目線に合うようにしゃがんだ。
「どうしたの?具合悪い、とか?」
「あ、いや……。その……」
「日向ぁ、どうかした……って、空知さん?」
どうやら、ちょうど休憩に入ったらしく、日向と呼ばれた男子生徒はお手洗いに行こうとしていたらしい。
そして、渡り廊下で突っ立っているチームメイトが気になり山口くんが声をかけた、ということらしかった。
「山口、知ってるの?」
「うん。同じクラスの空知さん。どうしたの、座りこんで。あ、具合悪いとか?」
日向、くんと同じことをおっしゃる山口くん。
なんて、なんて優しいクラスメイトなんだ。
私は「大丈夫、ちょっと現実から逃げていただけ」と答え、ゆっくりと立ち上がる。
私の発言に日向くんは「現実?逃げる?」と疑問を浮かべていたけど、山口くんは大して気にしていないみたい。
あ、やっぱりクラスメイトだ。
私の奇行には慣れている様子。