第1章 ボーイズ&ガールズ
「じゃあ、顧問の武田先生に伝えておいて」
職員室に行き、先生に返却されていない本があると言いに行くと、そう言われた。
伝えておくよ、ではなく、伝えておいて……?
えっと、つまりそれは、私が伝えろという解釈で間違いないのか?
「えっと、それは私が……ってことですか?」
「うん。どうせ暇でしょ。今なら体育館にいるんじゃない?あ、そしたら菅原もいるか。直接言いに行けば?」
職務放棄!!!!
私の仕事じゃなくないか、これ!?
「いや、無理ですよ。だって話したこともない人に、それも先輩に"借りてた本の返却お願いします"って言えないです。しかも今部活中なんでしょ?ますます言えない。無理」
「空知なら大丈夫だって」
「何を思って大丈夫と言ってるんスか。本人が無理だって言ってんでしょうが」
「教員に対してその口調なんだから平気だって」
ははは、と笑う目の前の教員をどうにかして一発ぶん殴りたい。
なんで大人って、教師ってこうも適当なんだ。
生徒が無理って言ってんだから無理なんだよ。
人の話を聞けって注意するくせに、こっちの話は一切聞かないとか理不尽すぎる。
こんな大人になりたくないな。
「先生を反面教師にするって決めた」
「どういう意味だ」
「そういう意味だ」
先生の機嫌が悪くなったのを感じたから「図書室戻りまーす」と言ってそそくさと逃げた。
図書室に戻る途中、私は足を止める。
あの先生、武田先生に絶対言わないよね。
言うはずがない、あの雰囲気だと。
ええ、やっぱ私が言いに行かないと駄目?
なんで今日に限って私が当番なんだよぉ。
大きなため息を吐いて、重い足取りで武田先生を探した。
ていうか、武田先生ってどこの部活の顧問?
菅原先輩って何部?
体育館って言ってたけど、どこの体育館?
第一?第二?
聞けばよかったぁ……。