第5章 夏
そして――
数十分後、波打ち際に4人が揃う。
「どうどう? ゆうな似合ってるでしょ?」
硝子が堂々と宣言するように言うと、悟は大きくうなずいた。
「おお〜〜! マジで可愛いじゃん、ゆうな!」
「えっ、あ、ありがと悟くん」
「ほんと、よく似合ってるよ。選んだのは硝子かい?」
「最終的には…」
夏油の穏やかな笑みに、ゆうなはつい頬を赤くする。
「じゃあ、いこっか。せっかくの海だし!」
ゆうなが笑って、波打ち際へ駆け出す。
「おい、先行くな!」
悟が追いかけ、砂浜に4人の足跡が並んでいく。
太陽が真上に昇り始める中、弾けるような笑い声が響き渡った。
波打ち際を走りながら、ゆうなは砂浜に足を取られて、少しバランスを崩す。
「わっ、つめたっ……!」
足元にかかった小さな波に驚いて、くすっと笑う。
「ゆうな〜! 水かぶっても平気なやつ?」
後ろから追い付いた悟が、キラキラした目で聞いてきた。
「いいけど……悟くん、顔が怪しい!」
「え、バレた?」
そのまま悟が水を手で掬い上げ、ばしゃっと小さな水しぶきがゆうなに飛んだ。
「きゃっ、冷たい!」
「ふふっ、ゆうな。こっちおいで」
後ろから現れた夏油が、優しく手を差し出す。
「ありがと!」
手を取ると、夏油の手のひらは体温をしっかり持っていて、夏の海風の中でも少しだけ安心した。
「よし、 あっちの岩場まで競争しようぜ!」
悟が先に走り出す。
「ちょ、急に言う!? ずるーい!」
ゆうなが笑いながら追いかけ、その後ろを夏油が穏やかな足取りでついていく。