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泡沫の夢【呪術廻戦】

第5章 夏


気づけば、ゆうなの肩に、傑の上着が掛けられた。
「……ゆうな」

「うん、なぁに?」

「いや、なんでもない。身体冷えてしまうから戻ろう」
傑が声を掛けると同時に
「ふたりともー、終わったー? こっち片付けるぞー」
少し
遠くから、悟のけだるげな声が響いた。

振り返ると、硝子がすでにバケツの水を砂に流していて、悟は花火の残りを袋に詰めていた。
「ふふ、じゃあ…戻ろっか?」

「うん」
ゆうなが歩き出す為に立ち上がろうとしたとき、不意に足元がぐらりとした。

「わっ……!」

砂に足を取られかけたところを、傑の腕がそっと支える。
「おっと、焦らないで。はしゃぎすぎて疲れてしまったかい?」

その言葉に、ゆうなは少しだけ笑って、

「えへへ、そうかも」

と小さく頷いた。

合流すると、悟がペチペチと肩を叩いてきた。

「ゆうなおっそーい。何しけたムード作ってんの? 俺たちもう片付け終わってんだけど?」

「別に、しけてなんかないよ。ね、夏油くん」

「…そうだね。むしろ、いい締めくくりだったよ」
悟がじーっと傑を見つめてから、ふいっとそっぽを向いて、

「ふーん、まーいーけど。じゃ、そろそろ帰る? 終電、ギリ間に合いそうだし」
と笑う。

「30分発なら間に合いそうだよー」
硝子が携帯で電車の時間を調べてくれている。
ま、逃しても近くで泊まれそうだけど。
そんな発言に悟がぜってーかえる!なんて話してるのをゆうなは笑いながら聞いていた。

隣に立つ傑とは少し離れた距離だけど、指先がかすかに触れるような、そんな距離。
ふと、傑がぽつりと呟いた。

「…本当に、楽しかったな。今日」

「うん。私も」
潮風の中、どこかほんのりと甘い気配が、ふたりの間に漂っていた。
――次の季節が、少しだけ待ち遠しくなるような、そんな夜だった。
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