• テキストサイズ

泡沫の夢【呪術廻戦】

第5章 夏


夏の朝。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

駅のホームに並ぶ4人の姿。じりじりとした太陽の下、セミの鳴き声が賑やかに響いている。
「……あっつ。電車来るまでに焼けそうなんだけど」
悟が半袖シャツの袖を引っ張りながら、ぐでっとしながら声を上げた。
「日焼け止めくらい塗っとけよ、悟。サングラスの形に焼けたらかっこ悪いよ」
「うるせーな傑、俺は焼けてもイケメンなんだよ」
「いや、皮むけてボロボロのイケメンほど残念なもんないって」
硝子があくび混じりに言いながら、アイスコーヒーの缶を口元に運ぶ。
その隣で、白いリボンの着いた麦わら帽子をかぶったゆうなが荷物を抱えていた。
「ねえ、なんか電車で海行くって、私たちっぽくなくない? 車とかじゃないんだ……」
「たまにはいいだろう? こういう“普通の夏”ってやつも」
傑が穏やかな声で言いながら、ゆうなのリュックのファスナーをそっと閉めてやる。
「あ、ありがとう、夏油くん」
「気にしないで」
そのやりとりを、悟がじーっと見ていて、
「おいおい〜〜傑?なにさりげなく好感度上げてんの?」
「別に、普通のことしただけだろ」
「その“普通”が問題なんだよ! ゆうな! 俺のリュックも閉めて!」
「悟くんカバン持ってないじゃん」
「全部ゆうなのとこに荷物入れたからな!」
そんなやり取りをしている間に、ホームに電車が滑り込んできた。
「乗るよ。空いてる車両、あっちだ」
傑の声に導かれ、4人は連れ立って乗り込む。
ロングシートに横並びで座ると、電車の窓から差し込む陽射しが、肌をじんわり照らした。
「…なんかさ、上手く言えないけど、こうしてると普通の高校生っぽくない?」
ゆうながぽつりと呟いた。
「まあ、俺たち呪術師だしな。こんな“普通”は中々味わえねーよな」
悟が腕を後ろに組んで、どこか遠くを見るような顔をする。
「けど、そのたまにがあるから頑張れるのかもね」
硝子がボソッと呟いて、缶コーヒーの残りを飲み干した。
電車の中は心地よい揺れと風。
夏の匂いに包まれて、海へ向かう4人の旅が、静かに始まっていた。
/ 37ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp