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泡沫の夢【呪術廻戦】

第5章 夏


夕暮れ時の渋谷
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空が茜色に染まり始め、雑踏もどこか穏やかな空気に包まれている。
人通りの多い通りを抜け、ゆうなと硝子は少し静かな裏通りへと足を向けていた。手には紙袋。中には、今日選んだばかりの水着が入っている。
「ふふ、ほんとに水着買うだけでこんなに時間かかると思わなかったわ」

硝子が軽く笑いながら、肩をすくめた。
「だって、どれも似合わなくて……。でも、硝子ちゃんが選んでくれたやつ、すっごく可愛い」

ゆうなは照れくさそうに笑いながら紙袋を見下ろす。
「ふふ、まぁ…あんたの体型なら、正直何でも似合うけどね」

硝子はそう言って、ちらりとゆうなを横目で見た。からかうような視線に、ゆうなはまた小さく笑う。
そのときだった。
「やぁ、2人とも」
落ち着いた声が背後から聞こえ、ふたりが振り返ると、夕暮れの街灯の下に立つ黒い影。
制服姿の夏油だった。長い髪をゆるく結んで、手には缶コーヒーが握られている。
「えっ、夏油くん?」
「今日、ふたりで出かけてるって聞いたから。任務帰りの道中で会えるかなと思って、渋谷に来てみたんだ」

夏油はそう言って、ゆうなの紙袋に目を落とした。
「……水着、買ったの?」
「う、うん。持ってなかったから」

ゆうなは照れたようにうつむいた。
「いいのが見つかって何よりだよ。当日が楽しみだね」

夏油が笑いながら返すと、硝子はくくっと笑いを堪えた。
「それより五条が海で変な騒ぎ起こさなきゃいいけどね。夏油、ちゃんと見張っといてよ」
「…あぁ。任せて」

夏油の視線が、そっとゆうなへと移る。
「…じゃあ、そろそろ帰ろうか?」
「あ、うん」

ゆうなは少しだけ頷いて、夏油の隣に立つ。
「私は先に戻るわ。ふたりとも、寄り道しすぎないでよねー?」

硝子が手を振りながら先に歩いていく。

夕暮れの道に、蝉の声が遠くで鳴いていた。夏油とゆうなの肩が、ふと近づいた。
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