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泡沫の夢【呪術廻戦】

第4章 任務


ゆうなの部屋に扉が閉まる音が、静かに空間を包んだ。
「……ふぅ」
小さく吐いた息が、ようやく緊張をほどいていく。
脇腹にはまだ、痛みが残っているけれど、硝子の手当てのおかげでだいぶ楽だった。
制服を脱ぎ、寝間着に着替えると、ゆうなはベッドの端に腰を下ろした。
今日の任務、そして——夏油と過ごした時間が、頭の中を巡る。
(夏油くん、優しかったな……)
危険を察知したときすぐに前に出てくれて、
自分の怪我に気づいたときの、あの真剣な眼差し。
妹のように見てるって、硝子ちゃんは言ってたけど……
今日の彼は、なんだかそれ以上の何かを、まっすぐに向けてくれた気がした。
「はは、私、勘違いしてるのかな」
そう呟いて、小さく笑う。
でも、もし——この気持ちが本物なら、もう少し、近づいてみたい。
自分の足で、ちゃんと。
布団を引き寄せてベッドに横になりながら、ゆうなはそっと目を閉じた。

一方、その頃。
寮の別の一室では、夏油が机の前に静かに座っていた。
デスクライトの下、手帳を閉じて、ふと窓の外に目をやる。
月が霞んで見える夜だった。
(今日の任務……彼女の怪我は、自分の判断が遅れたせいだ)
ゆうなの血の滲む脇腹を見たとき、胸が締めつけられるようだった。
「大丈夫」なんて強がるその顔に、心が揺れた。
「……私、は……」
小さく呟いて、ため息をつく。
彼女は、本当に素直で、優しく強い。
けれど、その強さを誰が支えるかまでは、考えていない。
だからこそ、自分が——
(……欲が出ているな、私も)
妹のように思っていた。
そうやって距離をとることで、踏み込まずに済んでいた。
けれど、今日の彼女を見て、それはもう、言い訳にはならなかった。
ゆうなの笑顔が、怪我を問題ないと押し殺して見せたあの笑顔が、胸の奥でずっと、あたたかく灯っている。
「……また、一緒に任務に行けたらいい」
そう言って、夏油はゆっくりと明かりを消した。
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