第4章 任務
朝の空は高く澄んで、雲ひとつない快晴だった。
高専の門をくぐり、ゆうなと夏油は並んで歩く。夏油はいつものように穏やかな表情で、ゆうなの歩幅に自然と合わせていた。
「今日の現場、帳が不安定みたいだ。気配を断ち切るのは難しいかもしれない」
「そっか……じゃあ、早めに展開した方がいい?」
「そうだね。ゆうなは後方から術式を。……前線は私が引き受けるよ」
「うん、了解」
ゆうなは頷きながらも、夏油の横顔を少しだけ覗き込むように見る。
「ねえ夏油くん。私さ、ちゃんと力になれてるかな?」
その問いに、夏油は足を止めた。少しだけ驚いたように彼女を見つめると、ゆっくりと、いつもの穏やかな笑みを浮かべる。
「……なれてるよ、十分に。私が一緒に任務に出たいと思うほどには、ね」
「……そ、そっか。なら、よかった」
少し照れくさそうに笑うゆうなの頬に、朝の陽が差し込んでいた。
「ただ……少し無理をしすぎる傾向があるのは心配かな。ゆうなは、優しすぎる」
「え……それ、褒めてる?」
「ふふ、もちろん」
そう言って、夏油は再び歩き出す。ゆうなも慌ててその隣に並んで歩き出した。
その背中越しに、風がふわりと吹き抜ける。
「……夏油くん」
「うん?」
「ありがと。……頑張るね、今日も」
「うん。私もだよ」
──任務地はもうすぐ。
二人の足音が、静かな街路に響いていた。