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泡沫の夢【呪術廻戦】

第3章 夜


─帰り道、夜の高専近く。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
硝子とゆうなあとから合流した夏油はゆるやかに道を歩いていた。

パキッ……
微かな音とともに、誰かが足場に木を踏んだような音が、暗がりから響いた。
「……っ」
傍らを歩いていた夏油が、ふっと眉を寄せて立ち止まる。
「二人とも、下がって」
静かな声音に、思わずゆうなと硝子も緊張が走る。
──暗がりの奥から、ぬるりと這い出す呪霊の影。
無数の眼を持ち、ぬめるような声で笑うそれは、明らかに呪力を感知して現れた2級クラス。
「こんなところにまで……」

「はぁ、夜のアイスの後にこれとか最悪……」
硝子がポケットからタバコを取り出しながら呟く。
だが、呪霊の視線は真っ直ぐに──ゆうなへ向けられていた。
「ゆうな、無理しなくていい。私が──」
「……いいの、やってみたい」
震える手でゆうなが術式を展開する。
術式名は──《心珠(しんじゅ)呪法》。
対象の心に触れ結界を展開し空間から隔離できる呪法。簡易領域の役割も果たすことが出来る。
けれど未だ不安定で、呪霊は笑いながらその空間を突き抜けてきた。
「っ、ダメ……!」

「下がれ!」
夏油が前に出ようとした、その瞬間──
「ゆうな! 落ち着いて、“心”に触れて──!」

硝子の叫びが、ゆうなの胸に響いた。
(……守りたい。硝子ちゃんと、夏油くんを)
ズゥゥゥン──
術式が応えるように空間が震え、呪霊の体が結び目に絡め取られ、重力のねじれで引き裂かれるように消滅した。
「……やった、の……?」

「おお、マジでやったね」

硝子が思わず笑って、ゆうなの背中をぽんぽんと叩く。
「すごいじゃないか、ゆうな。……本当に、強くなったね」
傍らで夏油が、そっと微笑む。
ゆうなの頬がほんのり熱を帯びた。
「……ありがと、夏油くん……硝子ちゃんも」
しばらく、3人はその場で夜風を浴びながら、しばし無言で空を見上げていた。
アイスで冷えた身体はぬるくなりかけてたが、胸の奥に広がった熱は──冷めなかった。
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