第3章 夜
五条 side ◇
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カーテンの閉まった部屋。
静かな明かりの中、ベッドに仰向けになっていた五条の瞳は虚空を見ていた。
「……あの風呂上がりの顔、マジで……反則」
濡れたタオルを首にかけたまま、少し湿った髪の毛を乱暴にかき上げる。
(ゆうな……俺のこと、全然そういう目で見てねぇよな。どうせ幼なじみだからっていうゆうなの壁がでけぇ)
頭にこびりついて離れないのは、湯上がりの少し赤らんだ頬と、髪を後ろでゆるくまとめていたあの横顔。
(あいつ、なんて顔すんだよ……高専来てから大人っぽくなりすぎだっての)
自分に見せたことのない表情が、どうしようもなく、ムカついた。
「……っ」
手はもう、勝手に動いていた。
制服のズボンを下ろし、指先で熱を確かめながら──
「……ゆうな……っ、はぁ……っ」
低く吐き出された声は、やけに切なく、
それでも欲望に忠実だった。
彼女の笑顔が、五条のお下がりの大きめのTシャツからはだけた肩が、頭から離れない。
「好きだよ……お前しか……いないのに……っ」
どろっとした熱が手の中に溢れて、
静寂の中でその声は消えていった。