すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第16章 ほんの少しのかけ間違い
住吉の体調不良から二日後、完全に復活した住吉だったものの、この日、一か所仕事を済ませてからの出勤となる為、到着が遅くなっていた。
「…んじゃ!凜桜ちゃん、声出さないようにね?」
「はい!お任せください!」
「頼もし」
「でもいいの?」
「諒君いないんじゃ仕方ないじゃないですか。」
クスクスと笑いながらもビニルに包まれていく凜桜。TictAに乗せるための動画を撮ろうとしていたのだ。
カメラはいつもの如くに千紘。琥太郎が包まれた諒をずるずる引きずりながらも、事務所が殺人現場風になる、という想定だったのだが、肝心の諒が急遽オフィスにいないと言う事になった。
その為…ーーーー
『凜桜ちゃん頼んでいい?』
白羽の矢が立ったのは残る凜桜一人だった。上機嫌で引き受けた凜桜だった。
「…あ、そろそろ代表帰ってくるんじゃない?」
「…言ってる傍から帰ってきた!」
窓からちらっと見る千紘。それに小さく返事をすれば琥太郎が凜桜の両足を持ち上げる形になる。
「…ただいま…って、何やってんの?」
「証拠隠滅です!」
「証拠って、んな事起こらねぇだろ、つか、凜桜は?どっか買い物?」
「あー、どうですかね…」
「てか諒だろ、それ中身。お前もいい加減に付き合わなくていい。」
そう話しながらもドスッと軽く住吉はそのくるまれた『人型』を軽く踏みつけた。
「…あ」
「なんだよ」
「いえ…」
そういう千紘を横目で見ながら住吉は琥太郎に視線を送る。
「しっかりとそこ掃除しとけよ?」
「あーぁあ、俺じゃないからね?」
そう言いながら、琥太郎はゆっくりと包まれた体を起こしてべりべりとはがしていく。
「…あー、いい。お前はそっちふけ。」
そう言って住吉が人型の上に乗り、べりべりとその封を開けていく。