すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第16章 ほんの少しのかけ間違い
「やだ」
「…はい?」
きれいなまでにはっきりと、否定を示したのは他の誰でもない住吉だった。
「…忘れてくださいっていうのが嫌だっていう事でしょうか?」
「そう、それ以外あるわけねぇだろ」
「なんでですか?」
「なんでかって?」
「はい、理由あるんでしょうけど…」
「逆にさ?せっかく凜桜がそれなりに感情を表してくれてんのになんでなかったことにしようとしてるわけ?」
そう言われてふと顔を上げればなぜかにこやかに笑っている住吉と目が合った。
「…なんでって…そう逆に言われても…」
「ほら、理由がないんだろ?なら撤回とか忘れるとかは無しでいいな?」
そう切り返されては凜桜も何も言えなくなってしまっていた。
「…解りました…」
「ん」
そう短く応えた住吉はおいしそうに、そしてどことなく満足げに焼かれた肉を頬張っているのだった。
***
翌日、出勤してすぐに凜桜は琥太郎に呼び出された。
「凜桜ちゃん!あれからどうだった?!」
「あー、大丈夫でしたよ?」
「本当に?!大丈夫?!」
「大丈夫ですって、途中から話自体はそれてましたから」
「そっかぁ…ならよかった!ありがとう!」
そうして琥太郎も嬉しそうに笑ってその場を離れてデスクに向えばにこやかに仕事に向かうのだった。
「あ、代表、おはようございます!」
「うーっす、」
「代表ぉおはようございます!」
「琥太郎、お前今日用事ある?」
「え、俺?」
「ん、何か用事あったりする?」
「ありませんよ?」
「そっか」
しかしそこで会話は止まる。
「え、代表?!どうかしたんですか?」
「え?別に?聞いただけ」
「なんでですか?!」
「別に?本当に聞いただけだって」
そう交わして仕事に向かう住吉だった。