すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第15章 熱に浮かされて
それから二日、三日と日は経ち、一足先に諒が住吉の部屋を後にする。凜桜も部屋に戻り、よく晴れたある日。
珍しく住吉が少し遅れて出勤しようかとしている中、凜桜は先に出ることにした。
「…住吉さんが…珍しい事もあるものだ…」
そう呟きながらも凜桜はその時こそ、それほどに気にはしていなかった。
オフィスに着けば先に仕事を始める凜桜。少し遅れて住吉も入ってきた。
「…おはようございます」
「うっす…」
「おはようご…ざいます?」
「おー」
席に着いた住吉は資料を前に険しい顔でペンを走らせていた。その額にはよく見なければわからない程の汗がうっすらと見えた。琥太郎、千紘とそれぞれ商談に向かっていけば、オフィスには住吉と凜桜、諒のみとなった。
「…代表?」
「ぁあ?」
「顔色、悪いです…」
「気のせい、気にしないでいい」
「熱、あるんじゃないですか?」
手を伸ばしそっと額に触れれば確かな熱が凜桜の手のひらに伝わってきた。
「…やっぱり…」
「大丈夫。午後には取引先との会議もある。問題ない」
「取引先、ですか…」
「あぁ」
「だからって、それが無理していい理由になるワケないです!」
いつもならば大抵引き下がる凜桜が、珍しく声を荒げた。住吉は少し驚いた表情を見せるが、少し笑みを浮かべればまたペンを走らせる書類へと視線を戻す。
「心配し過ぎだ。倒れはしない」
「…・・本気で言ってるんですか?」
静かな、いや、静か『すぎる』ほどの凜桜の声に住吉の手が止まる。はぁ…っとため息を吐いて一旦はペンから手が離れるものの、だからと言ってどうこうするつもりもないのも解った凜桜は唇を軽く噛みしめる。