すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第13章 後悔した食事会
そして一人で残業をする凜桜。他の社員はとっくに帰宅。恐らく住吉と小宮もそろそろお開きになっているか…もしくは…
「(社内恋愛が禁止というだけで…)そういう事になってもおかしくないよなぁ…」
ぽつりとつぶやく凜桜。スマホの時計ですら21時を回っている。
「…帰りたいような…帰りたくないような…」
もし万が一住吉と一緒に小宮が帰っていたら?そんな不安が凜桜の中に渦巻いていた。
「…かえろ…」
考えていても仕事が進むわけでもなく、むしろ今日分の仕事に加えて明日に回してもよかった分まで終わっている。重たい腰をゆっくりと上げ、小さくため息を吐けば電気を消して扉を開けようとした時だ。
「…ぉっと、あれ、まだいたのって…」
「代表?」
「今から?遅くない?」
「遅い、ですかね」
まっすぐに目を見れない凜桜。すれ違い様にふわりと鼻を擽る香水の香りも住吉の物。だとすれば恐らく『そういった』事は起こっていない…どことなくホッとした凜桜だったがふと視線を重ねることも無いままに住吉は声をかけた。
「…どうかした?」
「いえ、なんでもありません」
「気になる?」
「…ッッ…それは…特に…」
「いったろ?食事だけだって」
「……そうなんですけど…」
「何?何かすっげぇ不満そうだけど?」
そういわれながら帰るタイミングを逃してしまった凜桜。
「…代表は…」
「ん?」
「まだお仕事…ですか?」
「食事で一旦出たからな」
「……そうですか…」
電気をつけて再度席に着く二人。
「…凜桜は終わったならかえっていいよ?」
「いえ…そうはいきません…」
「終わってんだろ?」
「…少し明日の分も終わらせて置いたら明日それこそ来なくて済みます」
「…なるほどな」
「……はい」
一緒に居たい…そういう気持ちは少しだけ凜桜の心に閉じ込めて住吉と二人、仕事に向かうのだった。