すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第12章 気付いた思い
「なんでそうなるんですか?」
ふと出た言葉は思いもよらない程に焦りをにじませていた。
「…なんでって…自覚ないん?」
「自覚?」
「さっきの仕事仲間の中に代表の名前だけなかったでしょ?」
「……えーっと…」
よくよく思い出してみれば確かに名前を告げなかったのかもしれない…そう思ったものの、凜桜は少しだけ首を傾げた。
「…なんでだろ…」
「無自覚…クスクス…」
そう話していたものの、小宮に頼まれていたことも終えた凜桜はこれで後は代表に丸投げだ…と安堵もしていた。
***
そしてなんだか心にもやもやとしつつも住吉と小宮の食事会の金曜日。夕方になってがたりと席を立つ住吉に凜桜は声をかけた。
「…行ってらっしゃいませ」
「ん、んじゃ、あとよろしく」
「はい」
そして残っている社員に声をかけて住吉はオフィスを後にする。そんな相手の背中を見送り、窓から見下ろしている凜桜を見て諒は笑っていた。
「…気になんなら『行かないでください』っていえばいいのに」
「いえると思いますか?」
「いえるかどうかは凜桜ちゃん次第だろ?」
「そうなんですけどね?」
「あーぁあ、よかったな」
「何がですか?」
「社内恋愛禁止で」
「いいのか悪いのか…」
「悪いって事にしとけば?そうすれば小宮ちゃんと代表が付き合う事はないでしょ?」
「……ッッ」
「やっぱり好きなんじゃん?」
諒にくすくすと笑われながらも凜桜自身初めて住吉への恋心に気づくのだった。