すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第2章 突然の事故
「あの、今日は本当にありがとうございます。」
「いえいえ、また明日。」
「はい、お疲れ様です」
そうして凜桜は住吉に礼を言ってその場を離れた。タクシーで20分ほどか…自宅に向かうものの、少し離れた所でタクシーは止まる。
「あー、お客さん、これから先はちょっと進めないんでここでもいいですか?」
「進めないって…」
「火事みたいですねぇ、お客さんの住んでる所じゃさすがにないと思うんですが…」
「・・・うそ…」
下ろされて少し歩けば煙があたりを包み込んでいる。
「…やば…」
そう、嫌な予感は的中。凜桜のマンションが火元だった。とはいえ、朝から仕事に向かっていた凜桜が原因ではなく…
「すみません、ここから先は…!」
「私、ここの住人なんですが…!」
「そういわれましても、見ての通り完全に…」
そう、周りに飛び火すらしていないもののマンションが燃えている。
「なんでよ…まだ…初任給もないし…」
とはいえ、印鑑・通帳…その他の必要備品はすべて持ち歩いている。そうは言っても着替えもなく、何より家を失った。かといって今からオフィスに戻るにも戻りようがない。
「…どうしたら…ッッ…」
わらにもすがる思いで凜桜はスマホを取り出した。
「・・・さすがに出ないかな…」
そう諦めかけた時だった。
『もしもし?』
「あ…だいひょ…ぉ…」
『どうした?帰ったんだろ?』
「そうなんですけど…」
『後ろめっちゃ騒がしくない?』
「助けて…ください…」
頭や心が動転してしまっているのだろう。凜桜はそれを言うのが精いっぱいだった。