すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第9章 知らされた距離感
「ここじゃマズいことでもあった?」
「いえ、そういうわけでは…」
「ならいいんじゃない?もう少しいても。俺は構わないよ?」
「……そうは言っても…」
そう、昨日凜桜が聞いた『ゆりか』という女性の名前がまだ鼓膜に残っていた。あんな風に愛おしそうに呼ぶのは決まってる…そう、彼女だって…だとしたら、これ以上この家にいては申し訳ない。そう思ったのだ。
「…で?」
「で、っていうのは?」
「行ってみるの?」
「内覧とか、ですか?」
「そりゃ」
「…そうですね。ただ一回連絡してみてって感じだと思いますけど…」
「っそ」
軽く返事を済ませる住吉。ただ、住吉としてはなぜ急になのかと不思議に思う事もあった。そんな時だ。
ピンポーン…
「はい?って……何?」
『何?とは失礼な』
そうインターホン越しに聞こえたのは女性の声だった。
「…あ、え?」
「ちょっと待ってて?」
そうして住吉は頭を掻きながら玄関に出ていく。
「…ーーー」
親し気に、話している住吉と女性。ただ、その声は近くなる。
「…あら、・・・そういう事」
「あ、いえ!私別に彼女とか、そういうんじゃなくて、住吉さんの会社の部下で、それでやましい関係とかそういうんじゃなくて、なので『凜桜ちゃん、』…ッッ…住吉さんはちょっと待ってください!なので、あ、おうちもすぐ『凜桜ちゃん、俺の母親』ですよね!お母さん…!・・・・へ?」
「ん、だから俺の親。」
「……へ?」
「いつも仁がお世話になってます。」
「…え、あ……へ?」
「クスクス…」
「笑い事じゃないって、ハァ…来るなら先に連絡してって…」
「そうね」
「……あ、すみません!私、大野凜桜と言います、ご挨拶遅れましてすみません」
「いいのよ!じゃぁ、今日は帰りますね?」
「あー、うん。送る?」
「いいわよ」
そうして嵐の様に去っていった。