すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第8章 ただそこにいる意味
「あと…」
そう切り出せばぴたりと歩みを止める住吉。凜桜もつられて立ち止まる。
「なんでしょうか?」
「さっきの。」
「さっき?」
「モラハラ、軟禁、わいせつ未遂と、あとなんだっけ?」
「………あー」
「そんな報告は貰っていない。てか、何されてんの?」
「えと…」
「事務所戻ったら話し合いな」
「…はい」
即座に反抗や反論しなかった川端を思えば、実際それらの行為は行われていたのだろう。恐らく合計で3回の食事会という名の場面で。
諒が待つ車の後部座席を開け、住吉が先に乗り込む。
「待たせた、悪い」
「案外早かったじゃないですか?」
「まぁ、そうか?」
「話はついた感じですか?」
「まぁ、凜桜が先方を張り倒したからな。」
「はっ…!?…り倒した?!」
「ねぇ!代表!前後の説明!」
「要らねぇだろ」
「要りますよ!」
しかし内容とは裏腹に住吉は楽しそうに話していた。
「いやぁ、動画撮りたかったわ」
「勘弁してください…」
そんなことを話している二人をバックミラー越しに見ながらも諒は車を走らせた。
「…ぅわっと!」
「あ、すみません」
「急に走り出すなって言ってんだろうが…!」
しかし急発進のせいだったとは言え、凜桜は住吉の左肩にトスっとぶつかる。
「…ごめんなさい」
「いや、大丈夫。悪いの諒だから」
すぐに退こうとするものの、すぐにやってくるカーブでうまく体制が整わない。ようやく落ち着いて退いたものの、そのタイミングで諒は住吉に言葉を投げかけた。
「…ラブラブっすね」
「誰のせいだ」
「俺のせいですか?」
「他に誰がいると思ってんの」
「えー?」
笑いながらもどことなくホッと安心できる、そんな空気感に包まれていた。
事務所に戻り、商談から戻っていた二人がムックを食べきっている状態に住吉はあきれ、言葉を失う。冷めちゃっててもったいなかったから!と至極当然の理由を琥太郎は住吉にぶつけるのだった。