すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第8章 ただそこにいる意味
目には今にも零れそうなほどの涙をこらえながらも、キッと川端をにらみつける凜桜。
「うちとの契約、破城になるぞ」
「…クス…」
その最後の一手と言わんばかりの川端の声を聞いた住吉は凜桜の方に手を置いてまっすぐに川端の前に立った。
「…だからなんだ。こっちから改めて契約解除の書類を送らせていただく。」
「いいのか!」
「だぁから、言わせる気か?」
「何をだ!」
「お前の会社は、俺らの会社に要らない。俺らがする仕事ではもったいない。他の会社に時間を使う方がよっぽど有意義だ。こちらから願い下げだ。」
最後の一手をさらりと交わす住吉。『帰るぞ、大野』と伝えれば住吉はさっさと部屋を後にする。それに着いて行く様に凜桜も部屋を後にしていった。
エレベーターに乗った瞬間から堪えていたのが噴き出す様に笑いだした住吉に凜桜はあっけにとられながらもあわてていた。
「…あの…、代表…すみません、」
「何が、クスクス、よ……てか…フフハハッハ…」
「笑い過ぎです」
「だって、思いっきり振り切ったろ、バチンって言ってたぞ?」
「…あれは…本当にイラだって…」
「ほんとあぁ言うの勘弁して…笑い堪えんのすっげぇ苦しいから!」
そう続けた住吉。苦し紛れの言葉でも、社員が減るからという馬鹿げた理由でもなく、ただ純粋に凜桜をみていた。
「でもさ?凜桜ちゃん?」
「はい。」
「何度も言うが…ちゃんと話してくれな、これからは。」
「はい。」
「それと…」
そう切り出せば住吉はふっと笑みをこぼす。
「俺は一度社員として受け入れたからには、しっかりと責任持つ。だからやりたい様に、後悔しないように。」
「はい。」
「社外に必要とされるのは最高だ。でも、やり方を間違えるな。」
そう言って背中をトンッと軽く叩いていた。