すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第8章 ただそこにいる意味
ゆっくりと立ち上がった住吉は手を差し出した。
「…ほら、立って」
「…ッ」
「凜桜ちゃんも言われっぱなしだろ」
「…でも…権力も何もないし…」
「権力?要らないって」
「…そうは言っても…」
「君は俺の秘書。つまりは俺の側近であり、SMYコーポレーションの大事な人材だ。馬鹿にされたままじゃ困る。」
「…でも…」
「いったよな?『でも』は言うなって。行くぞ」
そう言って住吉は鞄を取り、凜桜を連れて事務所を後にする。車でムックを食べている諒にコンコンと合図をすれば『車、出して』と言いのける。
「…え?どこへ?」
「川端商事」
「…今からですか?アポは…」
「ないよ」
「いいんですか?」
「・・あー、アポさっきとったか」
電話の事だろう。それでも十分だと住吉は思っていた。20分ほどの所で3人の車は川端商事に着いた。
「悪い、諒はここで待ってて」
「あ、はい」
「行くよ。」
「…ッッ」
「行ってらっしゃい」
そうして住吉と凜桜は車を降りていく。その背中を見送りながらも少し時間ができた、と言わんばかりに時間つぶしに入った諒。
「SMYコーポレーションの住吉です。川端社長はいらっしゃいますよね?」
「アポイントは?」
「とってます」
「少々お待ちください」
「…急ぎ目でお願いします。」
そうして受付の女性から少し離れた住吉。しかし気になるのは落ち着きがなくなってきている凜桜だった。
「大丈夫だ。心配ない」
「でも…」
「俺がいる。」
そう話しているうちに『ご案内します』と声をかけられた。