すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第7章 スピーカー越しの真実
ガチャリと部屋を出てきた住吉を見て諒は何かを察したのだろう。
「…凜桜ちゃん戻ったらモック食べるだけ食べて俺席外しますよ?」
「…悪いな」
「…いえ」
そう短い会話を済ませて少しばかり待っている時間ですら、諒でもどうするか…と言わんばかりの空気管を漂わせていた住吉。
「(何したんだ…?凜桜ちゃん…あれガチギレのトーンだろ…)」
いたたまれない位の諒はとにかく仕事に没頭していた。触らぬ代表にたたりなし…そういわんばかりに…少しして凜桜が戻ってくる。
「遅くなってすみません」
「大丈夫」
「えと…コレと、」
何も変わらない様子で凜桜は代表の前に頼まれたものを置いていく。
「ナゲットのソース、聞くの忘れてしまって…バーベキューとマスタード、どっちがいいですか?」
「どっちでもいい。凜桜ちゃん先取っていいよ」
「あ、じゃぁ、マスタードもらってもいいですか?」
「あぁ」
しかし凜桜に対しては至って普通な住吉に諒は感覚がバグりそうになっていた。諒にも渡している時だ。
雅のスマホが……・・・鳴った。
「…出ないのか…?」
「…あ、その…」
着信画面を確認すれば、ディスプレイには『川端社長』の文字列。なかなか出ようとしない凜桜、しかし見ている間に顔から血の気は引き、表情はこわばっていく。
「いいから出ろ」
「でも…そういうわけには…」
しかしそんなやり取りをしている間にも着信は切れてしまう。
「諒!悪い、そっちで食べて?」
「え、あ……え?!」
「いいから!」
「あ、はい…」
そういわれ、別室を促されたものの、諒は袋を持って事務所を後にして車で食べることにした。諒が事務所を後にするかどうかのタイミングで再度凜桜のスマホに着信が入ってくる。
「…あの、私あっちで…」
「構わない。スピーカーにして、ここで出て」
「…でも…」
「社長命令。早く」
断れるわけもなく、凜桜は震える手で受話ボタンを押し、スピーカーに変える。
(お願いだから…聞かないで…)
『あー、凜桜ちゃん。よかった。出ないから心配した。間違えてたかと思って…』
その一言で住吉はピクリと反応する。