すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第7章 スピーカー越しの真実
翌日、まだ住吉が眠っている間にそっと家を抜け出す様にして凜桜は支度を済ませ、朝早い為、ワイパーのみの掃除を済ませて、早くも出社した。
「…こんなの…無理だ…」
そうして鍵付きの引き出しに住吉からのボイスレコーダーをしまい込む。その代わりと言う様にバンの中から取り出したもう1本のボイスレコーダーを取り出した。
「…うまく影武者になってね?」
そう祈りながらも昨日の残ってしまった仕事を片付けていく。そうこうしている間にもぞろぞろと出社してくる社員たち。
「…あれ!凜桜ちゃん!早!」
「てか代表は?」
「まだ来てないと思う。」
「そうなんだ!」
そう話していると始業時間より少し遅れて住吉は到着。
「…おはようございます」
「うっす」
そうして遅れてしまっている仕事の件を報告、また合わせて諸々の報告に合わせて今日の予定も伝えていく。そんな凜桜の声は平静を装っていた。けれど珍しく書類の角を何度もなぞっている。住吉の視線はそれを静かに追っていた。
「…で?」
「…と言いますと…」
「昨日の報告がまだ」
「…昨日…」
「食事会。」
「あ、それが…」
コト…っと住吉のデスクに置いたボイスレコーダー。一目見て住吉はそれが自身が渡したものではないと見抜くものの、じっと凜桜の顔を見ていた。
「…実は…録音し忘れまして…というか、ボタンを押したはずがうまく押せてなかったらしく…申し訳ございません…」
「……なるほど、な」
それを疑う事もない素振りでボイスレコーダーを受け取り引き出しにしまう住吉に少しばかりホッとした表情を見せた凜桜。
「…で、ホント悪いんだけど、俺腹減った…」
「へ?」
さっきまでの雰囲気からは程遠くも感じる言葉が住吉の口から出てくる。
「…悪い、凜桜ちゃんお使い頼まれて」
「あ、はい」
「モック」
「チーズバーガーですか?」
「ん、それとドリンク、あとナゲット」
「かしこまりました。」
「琥太郎と千紘は別件商談だろ?諒と凜桜ちゃんのも買ってきていいから。諒に何がいいか聞いていってきて?」