すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第6章 押し殺す声
頬から手を離し、ガタっと席を立てば背後から抱き込む様にし、耳元で囁くように、しかしはっきりとした口調で話し出す。川端の吐息が耳にかかり、冷たい指先が服の上からといえど、腰元に触れてくる。
「住吉君の重荷になるのか?君のせいで、うちとの仕事がなくなる。信頼がなくなる。一件の仕事の『重さ』…わからないかい?……そうなった時、君はその責任が…取れるのかい?」
その言葉が深く心に突き刺さる。そのまま凜桜は呼吸の仕方すら忘れ、心が音を立てて壊れそうになるのを必死に耐えていた。
全ては…住吉さんの為…彼が守ろうとしている会社の為…
それでも潰れそうな感情と、首に這う唇に声を絞り出す。
「…やめて…くだ…ッッ…さい…」
「やめていいの?それともここをキャンセルして部屋のがいいかい?」
「…私はただ…住吉社長の…役に…ッッ…」
「だったら解るだろう?君なら、どうすればいいのか…何が大切か…今すべきことは…何か…。今夜一晩僕に従って、・・ね?」
耐え切れなくなった…助けてほしい…
凜桜は住吉に対して、切にそう願ってしまった。
そうなってしまった以上…気付いた時には川端の手を振り払ってしまっていた。
カシャン…!
簡単な音とともに凜桜の分で用意されたワイングラスが床に落ちる…おびえて、拒絶を示した表情からは笑顔の仮面は剥がれ落ちてしまっている。
「…そんな顔もかわいい。だけど…僕的には感じてくれて快楽に溺れる顔を見たいんだけどなぁ…」
「やめ…ッッ…近づかないで…」
「そんなこと言っていいの?」
「……ッッ…」
「住吉君に…捨てられるよ…?」
ドクリ…と波打つ胸、鼓動が早くなる…スタッフが料理を持ってくるのと同時に鞄を取り、凜桜はその場から走り去っていく。
「…ック…ヒック…」
ホテルを後にした時、思い出したかの様に住吉から預かっていたボイスレコーダーを取り出した。
「…ック…ごめん…なさ…ッッ…」
祈る様に、ただ謝るしか出来ないまま、凜桜の指は震えながらも録音終了を押下した。