すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第6章 押し殺す声
どうしたものだろう…待ち合わせの少し前に川端はやってくる。ドレスコードがある場所とは言え、シックなパープルのスーツに身を包んできていた。
「…お待たせ」
「いえ、大丈夫です」
「大丈夫って顔じゃないけど?雨が降り出してるから…早く中に入ろうか」
優しい声、普通でいけばこんな風に丁寧に扱われるのはすごく幸せな事だと思う。だけど…
凜桜の心にはただ単に重たく、ずしりと感じる『何か』が積もってくる感覚に襲われた。
「お待ちしておりました。川端様」
「よろしく頼む」
「かしこまりました。」
そうして通された半個室。通されてすぐに人払いをし、川端が自ら凜桜の座る椅子を引く。
「…さ、座って?疲れただろう?」
その瞬間からもうすでに逃げ場はなかった。凜桜は慎重に言葉を選びながらも笑顔を仮面の様に張り付けていた。業務連絡として受け取る資料について話をする凜桜と、一切資料に視線を向けない川端。一旦呼吸を整えた時だ。
「この間の事、……怒ってはいないかい?」
用意されていたワイングラスを傾けながらも川端は凜桜にそう問いかけた。その口調は今までと比べてもひどく甘く、そして優し気で…余計に凜桜は怖くなっていた。
食事が運ばれるまでの間の我慢だ…
そう思っていた凜桜はようやく口を開いた。
「…もう、終わった話だと思いますので…」
「終わる?クス…君と住吉君の関係、見ていてわからいとでも思ったか?彼は君に『そういう視線』は向けていないだろう?」
「…ッッ…それは…」
「だからこそだ、」
そこまで言えば身を前にかがませ、凜桜の頬をするりと撫でる川端の指。びくりと体をこわばらせる凜桜に、川端は小さく笑った。
「だからこそ、僕が君を彼の、住吉君の代わりに守ってあげたいと思うんだ。」
「…嫌…やめてください…」
「君がこうして怯え、僕を拒むことが住吉君にとって、会社にとって君は『問題の社員』であり、『使えない部下』になるんだ。解るだろう…?」
「それは…」