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すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~

第5章 捧ぐは、忠誠か…


そう囁く声が、ただ冷たく背中を這っていく。川端の手が髪に触れ、頭を撫でられ、加えてこめかみにキスを落とされる中、手は腰に滑る様に触れてきた。

「…ッッ…やめ…ーー!!」

声にならない声を振り絞り立ち上がろうとしたこの凜桜の手をグッとつかむその力は、この間までのスマートで紳士な態度の川端からは似つかわしくないものだった。

その時だ…

ヴーーーー…ヴーーーー…

凜桜のスマホが震えた。画面には『住吉さん』と映し出されているものの、それを知る前にすっと鞄を横に退けられてしまう。

「…君が拒めば仕事に影響を及ぼす。それは解るだろ?」
「……ッッ」
「…クス…そう、いいこだね」

グラスを置き、腰をなぞる手にゾクりと凍る感覚を覚えながらも凜桜はただ耐えるしかなかった。それでも響き続けるバイブ音にさすがに萎えたのだろう。川端は少し凜桜と距離を取った。そのタイミングで凜桜は鞄を奪取し、その場から走り去っていった。

声にならない声を抱いて、震える手で鞄からスマホを取り出せば、着信履歴に何件も住吉の名が連なっている。

「…かけなおさなきゃ…」

震える手でコールバックのボタンを押し、待機音が1コールした時だった。

『もしもし』
「…早すぎですよ」
『何回かけたと思ってる』
「すみません…出れなくて…急ぎですか…?」
『いや、急ぎというほどではないが…川端さんと一緒なら問題はないと思うが…』

問題…それは住吉がクライアントを信じている証だった。そのあとで住吉が何かを言っているが凜桜の耳にうまく届いてこなかった。

『……ーーーで、って…聞いてるか?凜桜ちゃん』
「え、あ…すみません」
『ハァ…とりあえず今は外、か?』
「……はい、川端さんと分かれて…」

その名前を口にしただけで体を滑る指を思い出す。声が震えるのを必死で抑えるのが精いっぱいだった…
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