すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第5章 捧ぐは、忠誠か…
突然のことで凜桜は住吉にメール連絡だけになってしまった。それでも連絡をして指定された場所に向かっていく。
「…こっち!」
会った瞬間に右手を挙げて川端は凜桜を呼んだ。
「…すみません、お待たせしてしまって…」
「大丈夫だよ。来てくれてありがとう。」
相変わらず紳士的な対応の川端だった。しかしそう思ったのはほんのわずかな時間だけだった。通された部屋は重厚な個室だった。扉も見るからに分厚く、恐らく『何か』があっても外には声の一つも届かないだろうと言わんばかりの部屋だった。食事の追加は部屋にある呼び鈴を鳴らせば都度やってくる。反対を言えば、呼び鈴を鳴らさない限りスタッフも『来ない』と言う事を示していた。
ゆったりとしたソファも完備されているこの部屋に、入った途端、凜桜の心に警鐘が鳴ったものの、時はすでに遅かった。
「…とりあえずワインと、食事は…」
お任せでと言っている手前、川端が決めていく。コース料理ではなく、少し話をしている間にも単品がいくつか運ばれてきた。
「好きに食べたらいい」
「ありがとうございます。」
「さて、と」
そう一言呟けば川端はすっと立ち上がり凜桜の横に腰を下ろす。
「…あの…ッッ」
「どうかした?」
「距離、が…」
「ん、嫌だった?」
「それは…」
「仕事の話だよ?」
それを持ち出されてしまっては凜桜も何も言えなくなってしまう。というよりも、何も言えなかった。
「…かわいい…」
「…あのッ」
ワイングラスを片手に、食事もほとんど手を付けないままに川端は凜桜の方に手を触れる。赤く怪しげにも見えるワインを見つめる様にしていたものの川端の瞳には明確な意図が宿っていた。
「…住吉さんの為にも、僕は君の力になりたい。秘書になってまだそれほど月日も経っていない中で、契約がトントンに進めば君の手柄にもなる。…解るだろ?」