すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第5章 捧ぐは、忠誠か…
こうして何事もなく、本当にただの食事会で終わった凜桜と川端。別れた後に凜桜は住吉に電話連絡を入れた。
『もしもし?』
「あ、お疲れ様です。大野です」
『おぅ、お疲れ様。どうだった?川端さんとの食事は』
「なんだか味が解りませんでした。」
『なんでだよ』
電話越しで怒っているでもなく、ただただくすくす笑う住吉の声に凜桜は心底ほっとしていた。
「…イタリアンでも、私の知ってるイタリアンの味と違うんですもん」
『じゃぁ今度みんなでまたイタリアン行くか』
「・・・考えときます」
『不参加か、そりゃ残念だ』
「不参加って決めてません!」
『はいはい、気を付けて帰れよ?』
「はい、あ。」
『ん?どうした?』
「代、…住吉さんは今日帰り遅かったりします?」
『…俺もう家だけど?』
「え?」
『何だその「え?」は…』
「だって…今日…」
『ん?仕事なら終わらせたけど?』
思いもよらない言葉だった。それでも次に出た言葉は『すぐに帰ります!』だったことに一番驚いたのは凜桜自身だった。
***
帰宅してすぐに凜桜の鼻を擽ってきたのはさっきまでの食事の場所とほぼ同じような香りだった。
「…これって…」
「カチャトーラ」
「…住吉さんが作ったんですか?」
「それはめんどくさい」
「でも…」
「laborだ…」
「クス…本場ですね」
「どこがだよ」
そんな他愛もない会話。それでもさぁ食べようとしている住吉の横顔をジっと見ていた。
「…やらねぇよ?」
「要りません!」
「そうなの?」
「……ん」
「なんだよ、その間」
すっと鶏肉一切れをフォークで刺し、『ん』と差し出してきた住吉。顔を近づけパクリと食べた凜桜にハハハと笑いだす住吉。