すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第5章 捧ぐは、忠誠か…
初めての取引先との会食に向かうその日。
「あれ?凜桜ちゃん今日いつもと雰囲気違くない?」
「え、デート?」
「違います、初めて取引先の方との食事を兼ねてのお話で…」
「へぇぇ、緊張するでしょ」
「いえ、この間代表と一緒に会った相手なので…」
「なるほど。でも代表って今日ここ来ないでしょ?」
「だから、今回は私一人で…って…」
「代表には?」
「昨日の時点でお話してるから大丈夫」
「そっか、」
そうしていつの間にか事務所を出発する予定の時間になろうとしていた。
「じゃぁ、気を付けてね!」
「はい、行ってきます!」
琥太郎と諒に見送られながらも凜桜は少し緊張しつつも事務所を後にしていく。3階の窓から二人は歩いていく凜桜の背中を見つめていた。
「…って、いきなり道間違えてる?」
「クスクス…大丈夫かね」
「ほんとに!」
そう話しつつも無事に成功するのを二人は願っていた。
待ち合わせで川端よりも先に着いた凜桜。少し待って川端の姿は見えた。
「…お待たせ。悪かったね、待たせてしまったみたいだ」
「いえ、私もさっきついたばかりなので…」
「結構待ったね、その言葉は…」
そう笑いながらも扉を開け、先に入る様に促したり、気にかけてくれるその姿は本当に紳士的だった。
会話の内容は至って普通のもの。仕事の話以外のものは気になるほどもなかった。あったとしても『イタリアンでよかったか』や、『いつから入ってるのか?』といったことだけ。仕事の一環なんだから当然だと思いながらも意外に顔も整った容姿の持ち主の為どことなく落ち着かないのも正直本音だった。