第3章 お嬢の彼女 千切 豹馬
彼女のエマとは幼馴染で中学からは恋人同士となった。
お互い運動部ってこともあって忙しい日々を送っていたが、恋人として過ごす時間は大事にとっていた。
充実した日々だった。
あの日までは…
『そんなっ…』
「次壊れたら後はねぇって…」
『ッ…きっと大丈夫だよ!ほら、神は乗り越えられる試練しか与えないっていうじゃん!』
「…ッ!ああ、そうだな!」
エマの励ましの言葉はまだサッカーを諦めたくねぇ俺の背中を押してくれた。
まだ終わってねぇ…
もう一度走りたい…
エマに見せてやりたい、俺がサッカーで輝いてるとこを…
然し、現実は甘くはなかった。
『ッ!豹馬…』
「糞ッ…」
なんとか脚はサッカーが出来るまで回復はしたが、気持ちだけは完全に回復できなかった。
あの時のようにぶっ飛ばすことが出来ずにいた。
怖かった、もう一度膝を壊してサッカーが出来なくなったら?
俺にはサッカーしかねぇんだ…
違う…本当はエマが離れるんじゃねぇか…って思った。
エマは俺がサッカーしてる姿が1番カッコいいって言ってくれたからだ。
そんな想いが俺の脚に鎖をつけた…
そして俺は逃げた…