第1章 諸伏警部と陽気な彼女
ふっ、と笑った私を見て不思議そうに視線を合わせた幼馴染みたちは、よくわからないと言った表情をしている。そんな二人を見てほんの少し私の口元も緩むが広告が終了したのを察知し、すぐさまスマホへと視線を戻す。スクロールバーを半分過ぎくらいのところまで動かすと、今度は背後から二人分の「え」と言う声が聞こえてきた。
先ほどよりも大きいその声は意外だからと言うよりも、驚きのあまり出たように思う。
それにしても相変わらず仲が宜しいようで。声かけまで息ぴったりだ。
「ア、アイドル?」
「コウメイ、お前そんな趣味が……」
「お二人ともお静かに。あと見えないので画面から離れてください」
私よりも身を乗り出して画面に食いついた二人へ遠回しに邪魔だと告げると、少しばかり挙動不審になりながらもいそいそと元いた場所へと体を戻す。
まあ驚くのも無理はない。特設ステージだと言われたきらびやかなステージ上でバックダンサーたちと共に笑顔で手を振っている──私より一回り以上年下であろう女性を見つめながら、そんなこと頭の片隅で考える。私だって、勘助くんが同じ動画を見ていたら間違いなく茶々を入れるはずですから。
今人気だと言うアイドルグループの一人がソロ曲を出し、そのセクシーで可愛らしいダンスも相まってSNSで人気を博している──と司会者がご丁寧に説明しているのを聞きながらお目当ての人を視線で追う。
司会者の掛け声と共に始まったイントロは聞いたことないが、サビへ入ると最近の音楽に明るくない私でも聞いたことのあるメロディが流れてきて、最近車のラジオで聞いたな、と思いながら真剣に画面を見つめる。
五分足らずで終わってしまった映像に物足りなさを感じつつも当初の目的は果たしたため、アプリを終了させてイヤホンを外せば、後ろで待機していた上原さんがここぞとばかりに話しかけてきた。
「諸伏警部、このアイドル好きなんですか!?」
「いえ? 特には」
「え? じゃあ、曲が好き……とか?」
「可愛らしい曲だとは思いますが、好みかと言われればそうでもありません」
「じゃあ何で見てたんだよ」
「何でだと思いますか?」